《Songster who sang》

False Islandで歌う、楽師アリステア・アルガの迷子っぽい探索の記録。

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探索39日目の夜半(よわ)の月。

夜半の月は白くおぼろに霞み、遅い時間だというのに
慌てる素振りもなく歩を運ぶ楽師にやさしい光を投げかけている。

宿には遅くなると言い置いてきており、
繕いを頼んだ衣類や、買い込んだ保存食の受け取りを頼んでいた。
この日、別行動をとっているバリトラがどこで何をしているのか
気にならないわけでもなかったが、だいたいは察しがつくような気がしていた。

楽師があとにしてきたのは、紅灯明るい辺りではなく
月光を薄暗いものに変えるがごとくに静もる、とある小路であった。
ほかのたいていの都市と同じく、この島でも
日常一般の品々を商う市場からやや離れた界隈で
魔術道具は売り買いされているのだった。

路地を一つ違えて足を踏み入れれば、売り物は人の目をはばかる
出処の怪しい種々の品へと様相を変える。
そちらには、楽師は用はなかった――これまでのところは。

買いととのえた幾つかの品物は油紙と薄い皮革に包まれ、
さして嵩張らない。
荷役動物を使わず、自分自身で運ぶことを考えると
探索の荷にあれこれとつけ加えるわけにいかなかったのは
事実だが、もともと、かれは杖持たぬ魔法使いであり、
あらたに大がかりな魔術構成式を組むのでなければ
香草や鉱物の類いのような、いわゆる触媒を必要としなかった。

かれが身につけ、また、ときに幾らかの代価とひきかえに
譲ることのある、歌唱石と称する魔術工芸品をこしらえるときにも
同じことがいえた。

先だって、ねだられて、半ば押し付けられるように手にした竜の鱗に
見合うだけの大曲を組み入れようとすれば、
さすがにそれなりの準備をせねばならなかったが
みじかい歌曲や、せいぜい火を灯すくらいの小さな魔術構成式を
宿らせるのであれば、自身の喉と楽器の弦の調子がうまく合えば
それでこと足りると言い切ってよかった。

ゆるゆると昇る月をみていると、少年のころ、ちょうど今の季節に
余りものの布を裁ってこしらえた人形(と称する、それらしきカタチの何か)に
童謡を歌わせるように仕掛けをして、ひとに贈ったことが思い出された。

島にかかる月は、はたして、もと眺めた月であるのか定かではなく、
どこかで夜空を見上げるひとの目に、同じ月が映じているのかどうか
確かめるすべはなかった。

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プロフィール

アース

Author:アース
False Island雑記と歌。


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アリステア・A・ガルド(1156)。
男性/人間/35歳。
歌を道連れに歩いてゆく、
当代クラウガルドの長子。

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